樋口一葉と水仙/樋口一葉小説第八作品「雪の日」のあらすじ

 

あらすじ

雪の降りしく風景にながめ入るつつ、珠は深い悔恨に打ち沈まざるを得ない。全ての過ちはこの雪の日にあったのである。
珠は山里の草深い小村に生れた。両親を早くに失い、母の姉にあたる伯母のもとで蝶よ花よと大切に育てられた。幼児から小学校の桂木圭一郎先生に可愛がられ、幼心に何のやましさもなく慕っているうちに、いつの間にか村の噂になっていた。珠が十五歳、桂木が三十三歳の時である。
伯母は激しく悲しみ怒り、珠を責め、会うことを厳しく禁じた。珠は噂を信じた伯母が恨めしく泣きくずれたが、心の底にうごめく駒の狂いには気がつかなかった。1月七日の雪の降る日、伯母の留守中、雪の舞をながめていた珠は桂木への慕情につき動かされ、作男をだまして、彼の下宿先へとひた走ってしまったのである。そしてそれが伯母も故郷もふりすてての出奔に直結したのである。
今、東京で桂木の妻となっている珠は雪の降る景色に見入りつつ、つれない夫に変貌した桂木やはかなく死んだと伝えられる伯母のことを想い、全ては誤りだったと深い悔恨にうち沈むのである。

全集 「樋口一葉」 小説編より




樋口一葉が執筆した小説22作品に戻る

 

樋口一葉と水仙のトップはこちらから