樋口一葉と水仙/樋口一葉小説第四作品「五月雨」のあらすじ

 

あらすじ

富裕な梨本家の一人娘優子(十九歳)は深窓の令嬢で、父親がほめ、女中たちも噂する杉原三郎(二十四)に恋するがmそれを口に出せずに打ち沈んでいる。そうした優子の悩みをいち早く察したのが侍女のお八重(十八歳)である。
彼女は故郷に幼馴染の恋しい男がいたのだが、その彼が上京した後、両親も死んだので、その男を訪ねて一人東京に出てきた。果実を売ったりして東京をさまよううちに、ふとしたことで梨本優子に出会い、彼女と乳姉妹であったことがわかったため、梨本家にひきとられたのである。
八重は妹のように可愛がってくれる優子のために、彼女の恋を成立させようとする。しかし、その恋人の名を聞いた時彼女は驚かざるを得なかった。杉原三郎こそ八重の幼馴染の恋人に他ならなかったのである。八重は苦悩するが、ついに自分の恋を断念し、優子の文を三郎に渡す。三郎は「茂りあふわか葉にくらき迷ひかな みるべきものを空の月影」という和歌を二人に残し、姿を消してしまう。五月雨の頃、別荘に行き、それぞれの思いに沈む二人の眼に映じたのは、雲水の僧となった三郎の姿であった。

全集 「樋口一葉」 小説編より




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