樋口一葉のお札発行以来、混雑が嫌で一葉さん関係の場所にはどこにも行かなかった私だが、久々(10年ぶり)に一葉さんを偲んで一葉さんゆかりの地を巡ってみました。
東大赤門前の法真寺からはじまり、三ノ輪の一葉記念館へと廻ることにした。このコースは10年前に自転車で廻ったコース。だが、今回はただ巡るだけでなく、全て歩いて廻ろうと決めていた。一葉さんが生きていた時代はみんな歩いたのだろうから、それを体験してみたいと思ったから。
私の年からしたらこれが最後の挑戦になるかもしれない、などとオーバーなことを考えながら・・・。結果、地図ももたず、10年前に廻った時の勘だけを頼りに歩いた為、途中色々な場所を寄り道しながらだったので、
4時間あまりかけて廻ることになり、頭はクラクラ、足にはタコができ、痛くて足がつってきて途中であきらめようかとも思った。
でも、もうじき目的地一葉さんの住んでいた竜泉の旧居跡につくと思い、頑張って歩き、ついに旧居跡を見つけた時はほんとうに嬉しかった。一葉さんが導いてくれたのだとも思えた。
そんなバカな<きまぐれひとり旅>を今回は写真入りでご紹介してみようと思います。
★本郷通りにある東大赤門前、法真寺にて一葉忌・幸田弘子さんの「たけくらべ」朗読を聴く
10時すぎに家を出て法真寺に向かう。
今日これるかどうかもわからなかったので、何も下調べもせずに来てしまったが、運良く幸田弘子先生の「たけくらべ」の朗読が行われていた。
途中からなのでお寺のお堂の中には入れてもらえず、私は外で聞いていた。
朗読が終わると幸田弘子先生のサイン会が行われていたので、私もサインをしてもらい、一緒に写真もとってもらい感激!
先生にお会いするのは三ノ輪の一葉記念館を立て直す前の年からだったのだがお元気そうでなによりだった。
その後、お堂の裏手にある資料館に行き、昔と同じように懐かしい品々を見る。
昔上映された、美空ひばり主演の「たけくらべ」のポスターがあった。
私の母がこの映画を見たことがあって、とても良かったと言っていたのを記憶している。いつかこの映画をみてみたいなあと思っているが、 なかなかチャンスがなく、見ることができない。
山田五十鈴さんも出ていたのだとこのポスターを見てわかった。
それにしても、サービス料金55円・40円・30円とポスターに入っているなんて不思議だなぁと思いながらそのポスターを眺めていた。
一葉が引っ越しをした所を印をしたという地図も↓写真に納めてきた。
私も結婚34年で10回ほど引っ越ししているが、一葉さんもずいぶん転々と落ち着かない生活をしていたのだなぁと同情せざるをえなかった。
★本郷通りから言問通りを右折し日暮里方面に向かう
途中、「弥生式土器発掘ゆかりの跡」というのがでてきた。 以前これを知り驚いたのを記憶している。
それから、暗闇坂を下りて竹久夢二美術館の外にあるレストランで 軽い食事をとり、急ぎ一葉記念館をめざす。 目的は木村真佐幸先生の講義を聴きたいが為だ。
以前自転車で来た時は谷中のあたりがお寺の多いところだなあと思ってみていたのだが、 今回は道を間違えたのかと思うくらい、 お寺よりも大きなマンションの方が目についた。 10年の間にこのあたりも変わったのかもしれないなあ・・・
本郷から言問通りを行き日暮里に出る。 言問通りを道なりに歩いていき、日暮里の陸橋までやってきた。 10年前とは異なり、この陸橋の上からスカイツリーが眞正面にクッキリ見えていた。
この陸橋をおり、ここで道がいつもわからなくなるのだが、
今回も同じでまた道に迷ってしまった。
まごまご歩いていると「正岡子規直筆句碑」という立て札がたっていた。 そういえば「「坂の上の雲」でさかんに子規が住んでいたのは根岸だと言っていた。 このあたりに正岡子規は住んでいたのだろう。
今回の旅とは関係ないので軽く通り越したが、どうやら方向が違うようなのでまた引き返したりして時間をとってしまった。
以前、三島神社のところを曲がると一葉記念館に近かったのを思い出し、 歩いている人に「三島神社はどこですか?」と聞いたら 「元三島神社」を教えられてしまった。
三島は三島だが何だかまわりの雰囲気が違うので、 写真だけとってここはすぐに出てしまった。
歩いている途中に「かなすぎ」というお店↓を見つけた。 金杉は以前にも通り、一葉の日記にも「今朝は金杉に菓子おろしに行く」とある。 こことは限らないが、まったく関係ないということはないので 写真に納めてきた。
言問通りから昭和通りへ、そして国際通りへまごまごしてしまったが、 何とか道を訪ねながら国際通りまでこぎつけることができた。 しかし、ここまでくるまでに私の足は限界に達し、 足にタコができ、痛くて痛くて変な歩き方をしていたら次第に足もつってきて、 一葉記念館はおろか家に帰れるかどうか心配になってきた。
もう、とうに木村先生の講義は終わっている。 あきらめて帰ろうかとも思ってしまった。 それでも道を聞きながら行くと、あと「20分くらいですよ大丈夫ですか?」といわれ、 「大丈夫です。もう2時間あるいてきたので歩けます」と答えると 「え〜ぇ、2時間も歩いてきたの〜?若いわねぇ」と 感心されてしまった。
けっして若くはないが今日の目的が歩いて廻ることだったので、 もう少し頑張ろうと思って歩いていた。 休むところがないかなと探していたら、鷲神社の案内板が出てきた。 「あっ!これがあのたけくらべに出てくる神社だ!」と 思うと元気が出てきた。 私は休むことなく鷲神社をめざした。
今年は「三の酉」まである年なので、境内は飾り付けをする人たちが、ちらほらいた。 以前も酉の市の時にきたことがあったが、その時は ものすごい人出で ゆっくり境内の中など歩くことなどできなかった。 ましてやお参りすることもできなかった。熊手を買って帰るのがやっとだったことを思い出した。
今回はお参りすることもできた。 おさい銭箱の所に「おかめさん」が置いてあって お顔をなでるとお願いごとができるようになっているそうなので、 私は家の中がまるくおさまるようにと、 おかめさんの顎から時計まわりにお顔をなでた。 これでご利益がありますように!
★樋口一葉旧居跡まで歩く
国際通りを鷲神社から歩いて行くと「たけくらべ」に出てくる「蓮華堂」「大音寺」 などの聞きなれた名前が出てくる。 一葉さんが住んでいたところはもう近いぞと確信しながら歩いて行った。
そしてついに樋口一葉旧居跡にたどりついた。 「ヤッター!」 と喜んでいたら、 数人で来ていた人のうちのおじさんが(私もおばさんだが)「ここが一葉さんがいたとこだ〜」と 石碑に飛びついていた。他の人たちと一緒に思わず笑ってしまった。 みんな一葉さんが好きな人たちなのだなと嬉しかった。
★樋口一葉記念館
そして最終目的地「一葉記念館」に重たい足を引きづりながら、やっとたどりつくことができた。
講演はとっくに終わってしまい、講演資料もなくなってしまったということでがっかりしながら記念館の中を見てまわった。
記念館の中には人がたくさんいた。 相変わらずの人気ぶりだなと嬉しかったが、 若い人がいないのが唯一残念だった。
記念館で新しく入手したという和歌「姥捨て山」についてうたった和歌があった。
明治29年(一葉が亡くなった年)の1月に歌ったという和歌には何か身につまされる思いがした。 題詠とはいえ、これが24歳という若さの人が読む歌なのかと・・・ 死期が近いというのを感じていたのかもしれないなあ・・と思わずにはいられなかった。
記念館の中には人がたくさんいたのと、足が痛かったのとでゆっくり見ることはできなかったが、 記念に一葉ゆかりの品を買ってきた。一葉さんが愛用していた紅さしをモチーフにしたクリアファイル↓と 一葉さんがタイトルを書いた雑誌「武蔵野」の表紙から複写したクリアファイル(一番下)。
★一葉記念館の外には記念碑がたっている
私の足は限界となっていたので、どこかで休んで行こうと探したら、 記念館の前に5年前にオープンした喫茶店があった。 「あ〜良かったぁ」とお店に飛び込んしまった。
しばらく休んでいたら隣にいたご夫婦の方に話かけられた。 「木村先生の講義が聞きたくてきたのですが資料はもうないと言われて・・」と、 今まで来た道のりのことを説明していたら、「資料2枚持ってますから1枚あげましょう」と 先生の資料を下さった。
天にも昇るほど嬉しかった。 お礼を言いながらしばらくお話をした。 だんな様は木村先生の教え子だそうで木村先生の人となりを詳しくお話して下さった。
先生の物の見方には優しさがあると以前から感じていたので、 そういう境遇の方だったのかとビックリした。 色々な人と出会えて、今日はほんとうに幸せな一日だった。
そして、その木村先生の資料の最後は、 こんな文章で終わっていました。 一葉忌に行かれなかった方の為に、それを掲載しておきます。
----------以下これより 木村真佐幸先生の一葉記念講演の資料より抜粋です--------
一葉は「奇跡の14か月」で「大つごもり」「にごりえ」「十三夜」「わかれ道」 などに象徴される暗い作品を描きながら、一方、 同時並行しつつ詩的抒情性豊かな「たけくらべ」で複雑に交錯する己の思いを 自己救済----従って常識では考えにくい”奇跡の14ヵ月”を結果した・・・・・・ と見るのは余りにも牽強付会と言うべきでしょうか。
今日、出口不透明でもって行き場のない不安定な社会であり、しかも、 言語を絶する悲惨過酷な現実で多くの方がご苦労されておられます。 しかし、とにかく希望を失わないことです。高邁な理想もさることながら、先ずは目の前の小さな幸せを目指したいもの--------- その結果、これの達成感から心の句読点を見、自分の在るべき姿の居場所確認も可能になりましょう。 これを一葉が事実を以って証明しています。