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あらすじ 十四歳の少年渡辺金吾の境遇は哀れであった。彼が四歳の時に母は実家に引き戻され、あとは意気地なく酒に憂さを晴らすのみの父親と放浪の生活を送ったのである。 十歳のころ、その父も酔いしれて路傍で死にはて、彼は一人、スリだ、盗人だと言われて育つうち、いつしか悪の道に入り込み、すさんだ暗い生を送っているのである。 その彼が十一月のある秋雨の夜、根岸の御行の松の近辺で琴の美しい音色に心ひかれ、耳をすませた。それは一人でわび住居をしている十九歳の森江しづがかきならす琴の音であった。 それに聞き惚れるうち、いつしか金吾のすさんだ心は静まり、生への希望さえわき起こってきた。彼はこれを機会に明るい人生に立ち戻るのである。 |
全集 「樋口一葉」 小説編より
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