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あらすじ ある夏の夕べ、小石川植物園の近く、木立ちが深く庭の広い閑静な貸家に、一人の若い女性が女中に抱えられるようにしてやって来た。 彼女は三番町にある名家の一人娘で雪子という十八歳の美しい女性だったが、気が狂い、下僕の川村太吉の世話で貸家を転々として養生しているのであった。 老いた父母や、養子で許婚者の正雄が新しい養生先へやって来て看病するが、雪子は取り留めのないことを言ったりして彼らを驚かせる。 その中でもしきりに「植村さん」「ゆるし給へ」「罪」「おあとから行きまする」などと繰り返し、彼らをはらはらさせるのである。 そんな雪子をいたわしく思う太吉や女中のお倉やお三どんの話からすると、雪子が学校に通っていた頃、美しい彼女に恋した男がいたらしい。 その男は植村録郎という名で、彼女に許婚者がいることを知らずにひたむきに彼女を恋したようだ。 そして、その結果、自殺をして果てたらしい。 雪子が罪の意識から狂っていったのは、それが原因となっているらしく、お倉たちは「浮世はつらいもの」と同情するのであった。 八月中旬から雪子の狂気は激しくなり、泣く声ばかり昼夜に絶えないが、それもしだいに細々と弱り消えていくようである。 |
全集 「樋口一葉」 小説編より
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